Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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ゆきのうえのしも

雪の上の霜

山本 周五郎

Read 雪の上の霜 (ゆきのうえのしも) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 25,586 characters · 50 screens

Aozora Bunko

「どこが不承知ですか」

「全部です、しかし理由は云いません、申してもわかって戴けないでしょう、わかって戴けるように話すこともできないようです、私はおいとまを戴きます」

「――なんですって」

「これだけは良心に咎めるので申上げますけれども、私には妻があるのです」

こんどは青岳が眼をみはった。よほど意外だったらしい、眼をみはってからうっといった。

「滝沢の宿にいるのは妻です、したがってお嬢さんを戴くわけにはまいらないのです」

「しかし、貴方は、母親であると」

「いいえ申しません、それは貴方がお考え違いをなすっていたのです、おそらく峠の騒ぎのとき私が、病人を抱えていると申したのを誤解なすったのでしょう、もちろん誤解をなすっていることにはあとで気がつきました、そこは相済まないところなのですが、私が病母を抱えているために貴方が世話をして下さるものと思い、あの際は御親切に頼るよりほかなかったものですから、そのうち折をみてと」

「それで知らぬ顔で」と青岳は堪りかねたように云った、「――知らぬ顔で、娘の世話を受けていたのか、半月以上にもわたって」

「気がつかなかったのです、微塵も、そんなお気持とは少しも気がつきませんでした、本当です、これだけは良心にかけて云います、単に御親切からだと思い、じつに恐縮していたんです、これだけは誓います」