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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
Read 雪国の春 (ゆきぐにのはる) by 柳田 国男 (やなぎたくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,000 characters · 266 screens
二人の山の鬼
すなわち一年の境に、遠い国から村を訪れてはるばる神のくることを、確信せしめんがための計画ある幻であった。そうして男鹿人のごときは当然に彼等のナマハギを、霊山の嶺より降りくるものと認めていたがゆえに、この深い山水因縁が結ばれたのである。
二人の山の鬼
男鹿のナマハギがもと赤神山の五人の鬼と、関係のあったことは想像しえられる。大和の吉野山を中心として、全国に宣伝せられた修験道が、仏教以前の根源をもつことは証明にかたくないのだが、この信仰にもまた五鬼と名づけて、神に仕える善鬼すなわち護法神があった。それが人間に住して山伏の元祖となると伝えて、山伏の家も通例は五流に分れていた。それゆえに男鹿の本山でも、五人の鬼を説き立てたのであろうが、五鬼とはいうが男鹿の方では、ミケンとサカツラとは夫婦の鬼であった。それが死んで後に眼光と首人と押領との三鬼が、出て来たように伝えているのは異様である。恐らくは別系統の沿革があったことと信ずる。
そうすると本山永禅寺の柴燈堂において、毎年正月の十五日の日に、山から降りてくる神人に堂の中央の窓から餅を投げて与えたという儀式、および何人もその姿を見ることを許されず、もし誤ってこれを見れば、必ずその人に災いあるべしと言った話も、後世の社僧たちがなおある程度にまで山の伝統を承認した痕跡である