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でんしんばしらとみょうなおとこ
電信柱と妙な男
小川 未明
Read 電信柱と妙な男 (でんしんばしらとみょうなおとこ) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,071 characters · 5 screens
「や、危険! 危険!」と、後じさりをすると、電信柱は手をたたいて、ははははと大口開けて笑った。
「小男さん、私は、こうやっていられない。夜が明けて人が通る時分には、旧のところへ帰って立っていなければならんのだ。おまえさんは、独りこの屋根にいる気かね。」と、電信柱はいった。
妙な男は困って、とうとう泣き出した。かれこれするうちに、人が通り始めた。電信柱は、とうとう帰る時刻を後れてしまって、やむをえず、とてつもないところに突っ立って、なに知らぬ顔でいた。妙な男は独り、
「おい、おい、電信柱さん、どうか下ろしてくれ。」と拝みながらいったが、もう電信柱は、声も出さなけりゃ、身動きもせんで、じっとして黙っていた。通る人々は、みんな笑って、
「こりゃ不思議だ、あんな町の真ん中に電信柱が一本立っている。そして、あの屋根にいる男が、しきりと泣きながら拝んでいる。」
といって、あっはははと笑っていると、そのうちに巡査がくる。さっそく妙な男は、盗賊とまちがえられて警察へ連れられていきましたが、まったくの盗賊でないことがわかって、放免されました。それからというものは、妙な男は夜も外へ出なくなって、昼も夜もへやに閉じこもっていました。