Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,712 characters · 29 screens
仁科の右どなりにいるのは、交易所洋銀両替承の和泉屋五左衛門。その隣が、洋書翻刻の米沢町の日進堂。
長崎屋の下座にいるのが、西洋医学機械を輸入する佐倉屋仁平。
もとは、佐倉の佐藤塾で洋方医の病理解剖を勉強していたが、墓から持って来たたったひとつの髑髏が唯一の標本。佐藤泰然先生の辞書や標本をせっせと謄写する情ないありさまに奮起して、医学の勉強のほうはキッパリと思いきり、日本の開化のために、率先して西洋の医学機械を輸入しようという志を立てたいっぷう変った人物。
ちょうど、話題は横浜の屑糸取引の禁制に移ったところだったので、いきおい佐原屋の噂になって、
「……佐原屋といえば、こんどの禁制でいちばん手いたい目にあった組だ。一万斤の生糸の売渡しが破談になったばかりか、そのためにトーマス商会と訴訟になり、その談判に一日の通弁料が百両という仕あわせでは、いかに佐原屋でも屁古たれたこったろう」
和泉屋がいうと、日進堂は首を振って、
「どうして、なかなか……ご承知の通り、あの気性だから、攘夷派が二三度攻撃したからって、それで恐入ってしまうような弱気な男じゃない……入関禁制の布令を聞くと、ケチのついた荷など引きとれねえというんで、神奈川の三文字屋へ船をつけ、店の前へ荷を山のように積みあげて火をつけて、ぜんぶ焼いてしまったそうな