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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,061 characters · 22 screens
「おい、ひょろ松、欄間のボヤボヤの光がなくなったろう?」
振りかえって見ると、なるほど、今まであった光がなくなって、さっきのように暗くなっている。
「お、なくなりました。いったい、これは、どうしたというんです」
顎十郎は、とほんとした顔で、
「どうも、こうもない。……つまり、これでこの朽穴が、お蛇体の通り道だということがわかったんだ」
「ほほう……。でも、叔父の話では、胴まわり一尺もある大蛇だという話だが、どうしてこんな小さな穴から……」
「そこが、それ、魔性の変幻自在なところ。入ろうと思えば、どんなところからだって入って来るだろう。……とまア、平素なら恍けておくところだが、今はそんな場合じゃない。それに、まごまごしていると、えらいことになる。実はな、ひょろ松」
いつもにもなく、真顔になって、ひょろ松の耳に口をあて、なにか、ひと言二た言ささやくと、いったいどんなことだったのか、ひょろ松が、
「おッ」
と、驚異の叫び声をあげた。
道行の段
その後、蛇体が欄間を伝うことはなかったが、お小夜の物狂いはいっこうにおさまらない。
日に日に窶れて、今はもう見るもはかないばかりになってしまったが、なにしろ、相手は変化玄妙の魔性。