Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,061 characters · 22 screens
捕物にかけては人にゆずらぬ顎十郎も、まるっきり手も足も出ない。縁先に張りこんだり、漫然と夜伽をしたりするほかどうする才覚もないらしく、いたずらにやきもきと気をもんでいるようすは、見る眼にも笑止なばかりであった。
それから、四日ばかり後のこと。
この村の恒例で、甲州術道五宿の『写し絵』の名人、小浜太夫の一座がにぎにぎしく乗りこんできた。
芸人というのではなく、なかば好きからの旦那芸で、花見ごろから田植の始まるころまで、調布、府中、青梅などの村々をまわって歩き、名主の家の広座敷やお寺の本堂などで、説教節にあわせて、『石童丸』『出世景清』『牡丹灯籠』『四谷怪談』などの写し絵をうつして見せる。
この『写し絵』は、そのころ八王子を中心に、久しいあいだ全盛をきわめたものだった。
桐でつくった頑丈な写箱の前面にのぞきからくりと同じレンズがはまり、カンテラのあかりで、美濃紙を継ぎあわせた、天地三尺、幅三間半ぐらいの幕にうつす。
横長の、八寸ほどの木の枠に、立ったところ、ころげたところ、起きあがったところと、いろいろな姿態を硝子に極彩色で描いた、五枚から八枚までの種板を嵌めこみ、幕のうしろにいくつも写箱をならべて交互にこれを使用する。