Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,604 characters · 28 screens
「ほんに、これは、都鳥」
「ちょっと見には、経すくいの織疵のようにも見えるが、よく見ると、けっしてそうじゃない。……経緯を綾にして念を入れて織り出したものだ」
「そうですよ」
「……妙なこともあるもんだ。支那に都鳥がいるなんてことはきいたこともない。水鳥はいようが、こんな光琳風の図柄などを知っているはずがない」
ひょろ松は、うなずいて、
「ほんに、そうです」
「どうも、こりゃア、日本人が織ったものとしか思われねえの。……ひょっとすると、長崎屋の呉絽にはなにかいわくがあるぜ……番頭が帰って来ない間に、三人で手分けして、みんなあらためて見ようじゃないか」
花世は、きっぱりした顔つきになって、
「ようござんす。やって見ましょう」
さすがに吟味方の娘だけあって、こんなことはのみこみが早い。束にして、ズルズルと縁先へ帯地を引きずってゆき、帯の両側を手早くたぐりかえしながら、あらためていたが、
「……どうも、こっちには見えませんよ」
ひょろ松のほうにも見当らないので、
「こちらにも、ございませんね」
「……すると、あれ一本きりだったのか。……はて、いよいよもって奇異だの……なんのつもりで、骨を折ってあんなものを織り出したんだろう」