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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,604 characters · 28 screens

Aozora Bunko

顎十郎は、横手をうって、

「いよウ、えらい、さすがは吟味方筆頭、そこまでわかれば大したもんだ、と言いたいが、その位のことは子供でもわかる」

庄兵衛は、道路の真ン中で地団太をふみ、

「これ、口がすぎる。……この俺にたいして、子供とはなんの言い草だ。……ぶ、ぶれいだぞ」

顎十郎は、苦笑しながら、

「そんなところで足ぶみしていないで、まア、お歩きなさい、人が見て笑ってます」

庄兵衛老、禿頭から湯気を立てていきり立ち、

「貴様のようなやつとは並んで歩かん、俺はひとりで行く」

「へへへ、じゃア、まア、前後になって歩きましょう、それだって話は出来る。……ときに、叔父上、それはそれとして、じゃア、死体はどうして運んで来たのでしょうな」

庄兵衛は、ずんずん先に立って歩きながら、

「わかり切ったことを! つづらにでも入れて一ツ橋を渡って来たのだ」

顎十郎は、懐手をしながら、ぶらぶらうしろからついて行く。

「でも、世の中には、船ッてえものもありやす」

「船なら、なにしにわざわざ鎌倉河岸へなど持ってくるか、たわけが! 沖へ持って行って捨てるわい」

「そこがね、お化けのちんみょうなところでさ。