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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Read 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,327 characters · 43 screens

Aozora Bunko

それまでのあいだに外出したものは何人ほどありましたか。……御門帳がありましたら、拝見いたしたい」

「……いや、わたくしどもでも、きびしく門帳をしらべましたが、いちにんも他出した者はおりませんでした」

「いや、よくわかりました。……それで、金蔵の金箱をあずかるお役人は何人ほどおられますか」

「ただいまのところ、五人でございます。……封金の員数をあらため、千両、二千両、五千両、一万両と、それぞれ箱入りにして封印をいたし、金蔵方の受帳へあげて蔵へ収納いたします」

「なにか、定期に収納金の内容あらためのようなことをなさいますか。……たとえば、棚おろしといったぐあいにですな」

「ございます。……七、八両月は吹屋の休みで、このあいだに封印ずれの改めをいたします」

「年に一度?」

「はい、年に一度。……なにかほかに……」

「いや、このくらいで……」

勘定場を出ると、そこから吹所のある一廓のほうへやって行く。

ここにもまた、厳重な中門。

吹所のひろい地内に十棟の吹屋があって、屋根の煙ぬきから、さかんな煙をあげている。

十人の吹所棟梁が吹屋をひとつずつあずかり、薄ぐらい大鞴仕立ての炉のそばで棟梁手伝いのさしずで、大勢の職人が褌ひとつになって、金をのばしたり打ちぬいたり、いそがしそうに働いている。