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あゆをくう

鮎を食う

北大路 魯山人

Read 鮎を食う (あゆをくう) by 北大路 魯山人 (きたおおじろさんじん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,517 characters · 3 screens

Aozora Bunko

鮎は水が清くて、流れの急な、比較的川幅の広い川で育ったのでないと、発育が充分でなく、その上、味も香気も、ともによくない。これが鮎のよしあしを決定する大体の条件である。

食べるにははらわたを抜かないで、塩焼きにし、蓼酢によるのが一番味が完全で、しかも、香気を失わないでよい。醤油をつけて照り焼きなどにすれば、醤油の香りや味醂に邪魔され、その天稟の香気は、たちまち滅してしまう。また、そのはらわたを抜いてしまったのでは、鮎そのものの味覚価値は語るまでもないことになってしまう。

東京へ来る鮎は、伊豆、九州が多いが、少なくとも地元で獲れてから三、四日か一週間かは、氷の中で経ったものである。そのほか、各地方から続々やって来るが、百のうち九十九までは、はらわたが抜かれている。よしやはらわたを抜かない工夫を凝らして、うまく蓄えたものでも、焼いている間に、腹が切れがちである。こうした鮎で、鮎のほんとうの美味さを知ろうたって、そりゃ少々無理ってものである。つまり、東京で鮎の真味を望むのは、木に拠って魚を求むるようなものである。

また、獲り方の如何で味も変る。岐阜の人は鵜に呑ませたのが一番いいと言って、年々歳々うるさいまでに自慢を繰り返している。