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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens

Aozora Bunko

「ウム、拙者もそう考えているが……その時に弦之丞が、宅助へ当身をくれたということが、どうもよく呑みこめない」

「それは、お久良と密談をする必要があったからであろう」

「しかし、お久良は阿波の者だし、四国屋もまた蜂須賀家の御用商人――どうして彼らと懇意なのか、それが不審だ」

そこでは三人が、弦之丞の所在をさぐる凝議がてら、しきりと銚子の数を殖やしているが、誰も、宅助の存在を認めて、一杯つかわそうとはいってくれない。

ゆうべ安治川屋敷へ連れてゆかれて、飢えは充分に救われたけれど、仲間の宅助にだって多少の人間味はある、飯に飽満してみれば、自然、その次には酒が呑みたい。

「一杯ぐれいは、おれにだって、廻してよこしたって、冥利は悪くねえだろう。四国屋のお内儀と弦之丞が話をしていたという種を、いったい、誰がおろしてやったと心得ているんだ。恩を知らねえ奴らじゃねえか」

と宅助は、あじけない顔をして座敷の隅に腰かけながら、心の底で不平を鳴らした。

宅助の仲間根性が、喉をグビグビさせて怨んでいるのに、三人は朝酒の酔いを顔に発して、さいつおさえつ話の興に入っている。

「じゃ、四国屋の店は、この大阪にもあるんだな」