Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens
もう少しで私は、どんな目に遭わされるか分らないところでござりました」
「まいりあわせてよかったの」
「はい、なんとお礼を申しあげてよいか、もう、こんなうれしいことは」
「無用じゃ。礼などと改まるには及ばぬこと、それよりはまた、やがて黄昏にならぬうちに、早く家へ帰られい」
「法月さま」
「や?」
「お見忘れでございますか」
「どうして、そなた、拙者の名を知っておるか」
「弦之丞様、わたしの名を、思いだして下さいませ」
「ウーム……」と、その時、はじめて彼はしげしげとおもはゆそうに、うつむけている女の顔の線を見入ったが、ハタと膝を打って、
「お、川長のお米であったな。久しく見ぬせいか、見違えるほどな変りよう、うかと、思わぬ失礼をいたした」
「あなた様も、その頃の、宗長流の一節切を吹く虚無僧とは、すっかりお姿がお違い遊ばして……」
「ウム。ちと仔細がありましての――がしかし、そなたの家や叔父の半斎殿には、あの節、唐草銀五郎や多市などが、ひとかたならぬ世話になった。その無沙汰も心苦しく思うておるが、時雨堂の騒ぎの後、半斎殿にもさだめし迷惑がかかったことであろう。あの人は、その後もつつがなくお暮らしであるか。