Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens
竹屋有村が言ったのである。イヤ、叱ったのである、森啓之助を。
なぜ叱られたかといえば、啓之助、三位卿の前で、コクリとひとつ居眠りを見せた。
時刻の来るまで、ふたりはここで四国屋のもてなしにあずかっていた。それも昨夜からの話である。船待にしては長過ぎるし、多少寝たには違いないが、絶えず気を張っているので、頭も鈍重になっているところへ、船出祝いに出された酒も少しは飲んでいたので、思わず、居眠りも出たというわけ。
だが、三位卿はピンとしていた。さすがにお公卿様の育ちである、折目正しく神経を冴えさせていた。
で、仮借なく、
「眠いのか!」ときめつけた。
「いや、決して」
啓之助はあわてて顔を撫で廻したが、自分でも、赤かろうと分るほど目が渋かったので、てれ隠しに箸をとり、わさびを溶いて魚の洗いをひと切れはさむ。
「決して、眠いなどと、そんな場合ではござりませぬ」
「お手前はちと物を食りすぎる、食べるから眠くもなる」
「はい、つい無聊のままに」
「無聊を感じられるほどお楽にいては困る。昨夜からとくと見るに、お久良の気ぶりにも多少腑に落ちぬ所もあり、かたがた油断はならない」