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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens
禅僧のように、椀や皿の残り汁まで、きれいに湯で洗って飲んで、きちんと隅へ下げておく。一椀の恩に対する作法である。
そこへ中年の小僧が、
「客人、すんだかい」と膳をさげに来て、
「蒲団と行燈は、その板戸をあけると中にあるから勝手に出してくんな。油があったかしら、油壺を見てくンないか、客人」
「ございます、どうもご馳走様で」
「そうか、じゃお寝み」
「もし、もし。ちょっとお待ちなすって」
「何か用かね」
「親方にご挨拶をしたいと存じますから、ひとつお取次ぎを願います」
「親方はいないよ、この間うちから留守なんだ」
「じゃお内儀さんか誰か、お身内の方に、ちょっと会わせて貰えませんでしょうか」
「お内儀さんは近所の衆と、遍路に出て今は留守だし、ほかにゃ弟子か部屋の者ばかりだが、何か用かい、客人」
「ナニ、別段なことじゃございませんけれど……じゃ、お前さんに伺ってみますが、誰か、ここの家に商売違いなお客が二人ほど、お世話になっちゃあいませんかね?」
「商売ちがいな?」
「若い男と女です」
「いねエなあ、そんな者は」
「いませんか……」と眼八が、ダメを押して額越しに相手を見つめた。ひょいと、その眼光りが変ったのを自分でも気がついて、