Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens
「ヘイ、ありがとうございます」
「なにがありがてえんだ」
「知ってる限りのことは白状しました。約束どおり、放しておくんなさるんでしょう」
「けッ、虫のいいことをいうなッ」
と、いきなり縄尻をしぼった眼八、
「さ、代官所へ歩け!」
と、源次の腰を蹴って、石段の方へ引きずってきた。
欺しに乗ったと知って、源次は、地だんだをふんだ。
いまさら、大勘の信を裏切ったことをすまなく思う。親方の秘密を売って助かろうと思った根性が、われながら情けない。
だが、もう追いつかない。ただ、歯ぎしりを噛むばかりであった。
釘抜きの眼八に、弱腰を蹴とばされて、勢いよく突ンのめりながら、何かわめいた。
眼八は、セセラ笑いをして、
「さ、出かけた、出かけた!」
と、もう一つ、足をあげて弾みをくれる。
よろけた途端に、捕縄が張って、また仰むけにひっくりかえった。
もう自棄だという風に、
「畜生ッ」
と、かぶりついてくるのを、
「亡者めッ」
と、用捨のない捕縄の端で、牛を懲らすようにひッぱたく。
そして、半死半生にさせながら、女坂をゴロゴロと蹴転がして行った。
すると。
雪のような月影をふんでまだら石段の下から息をせいてくる三、四人――それと白い月明りと闇のまじった杉木立の間を、バラバラと駈け寄ってくる提灯が見えた。