Japanese reading practice

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens

Aozora Bunko

胸もとへぶつかったのを幸いに、孫兵衛は世阿弥の細いのど首を左の腕へすくい込んだ。締めつけて脾腹をひと突きに――と思ったが、そうたやすくもゆかなかった。

甘んじて死をうけるようであった甲賀世阿弥は、今の一瞬に、もの狂わしく変って、

「わしは死なぬ! わしはまだ死なぬ!」

とない力をふりしぼり、孫兵衛の腕から逃れようともがいた。

「じたばたするなッ」

「むむむッ、一刻ちがいッ……」

滅前の一燦、おそろしい念力で対手の腕くびへ歯を立てる。

白い刃は、世阿弥のわき腹に当てがわれていた。

かれの前歯が孫兵衛の肉へ入ってゆく力は、同時に抱かされた刃を食い入れる力となった。孫兵衛は腕くびの痛みをこらえつつしばらくソッとしておいた。

サーッと早い血汐が裾へ行った。

「よかろう」

と、孫兵衛は思った。

強く刀をしごいて、平手で世阿弥の顔を押すと、闇の中へドシンと音をさせて、仰むけになった目と歯が白い。

グウッと、一度腹をつきあげた傷負は、

「一刻ちがいッ……」

とまたいった。

そうして、ビク、ビク、と大動脈から息を吐き出すように痙攣する。

「とどめを」

と思って孫兵衛が探りかけると、ふたたび洞窟の外で、お十夜、お十夜ッ、と三位卿と周馬の声が響いて、あわただしい足音の重なってくるのを感じ、かれの手も心もますますうろたえたらしく、そのまま