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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens
「おッ、足痕」
一瞬のまをおいて、同じ波うち際を二ツの影が疾駆する! 潮風が傷に沁みるのか、弦之丞は右腕のつけ根をつかむようにおさえて駈けた。途中で、サッと空へ舞ったのは、風にさらわれたお綱の天蓋――そして夜目にも白いあの素顔は、ふさふさとした黒髪を散らして。
千鳥ヶ浜、二十余町、またたくまに駈けちぢめた。そして、やがてジッと立つならば、鳴門の渦潮百千の鼓の遠音とも聞えるであろう頃。
「あ、あっ!」
と、先の周馬が狼狽した。
行く手をさえぎっている砂山の松木立から、ボカリと浮きだした朱文字の提灯。
問わでわかる船関の役所じるしだ。
「ちぇッ」と周馬、舌うちを鳴らして――「まずい所へ来やがった」
あわてて横へ飛んでそれたが、向うもいちはやく怪しいと知って、かれの先へ廻るようにバラバラと迫ってきた。
振り向けた黄色い明りに、ひと目、対手の影を見ると先は愕然と、
「オオ、関所やぶりの旅川周馬だッ」とうしろへどなった。
そして提灯を振りあげたが、その時、周馬の抜いた大刀は、かがみ腰に横へ流れて、男の胴を通っていた。
「なにッ、周馬だ?」
と三、四人、血煙の立った所へ、砂を蹴ってとんでくると、すばやく、周馬は位置をかわして、かえって、それを追ってきた男女の虚無僧に、