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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens

Aozora Bunko

要意に要意をいたさねばならぬ。で、自然に、そこもとなどにはお分りのない心遣いがある」

「そう申せばお顔の色がひどく青い――、海の反映か、樹木のせいかと思っておりましたが」

「あなたはまことに羨ましい」

「皮肉な仰せ――居候はひがみます」

「いや、それではない。すべて公卿殿の立場は気が軽いと申すのじゃ。事未然に発覚しても、およそ堂上の方々は、謹慎ぐらいなところですむ。で、おのずから討幕などということも、蹴鞠を試みる程度の気もちでやれますが、さて、大名の立場となると、そうはまいらぬ」

「いや、有村じゃとて、敗れた後は、決して生きてはおらぬ覚悟」

「そこがまことに羨ましいと思う――この阿波守などは、そうできぬ。なぜかといえば」

「しばらくお待ち下さい」

やや色をなして、三位卿、重喜の前へ健康そうな胸を張った。

「では、阿波殿には、討幕の壮図、やぶれるものとみておられますか」

「勝ちを信じる前に、そこに思いをいたすことは、もとより武門の慣いである」

「なんの! 今の幕府が――指で突いても仆れるほど、腐敗しきっておりますのに」

「いや、それよりは、こっちの足もとを気をつけておらぬと、事を挙げぬうちに逆捻を食うであろう。