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こうちょうのなげき
黄鳥の嘆き
甲賀 三郎
Read 黄鳥の嘆き (こうちょうのなげき) by 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 40,792 characters · 82 screens
といって、母は手に持っていた大きな厚ぼったい書類袋を差出した。
それには父の儀造の筆跡で、
二川家に関する書類
と書いてあって別に朱で「厳秘」と書き添えてあった。
野村は驚いてそれを受取った。
母は多少その内容について知っているらしく、
「悠りお読みなさい。今日は事務所へ出なくてもいゝでしょう」
「えゝ」
野村の行っている法律事務所は、父が面倒を見たいわばお弟子の経営で、彼は無給で見習いをしているのだから、可成勝手が出来るのだった。
「今日は休みますよ」
「そうなさい」
といって、母は部屋を出て行った。
野村は変に昂奮を覚えながら、書類袋を開けた。
中には父の日記の断片と思われるものや、二川重行から来た書状や、告訴状の写し見たいなものや、報告書見たいなものが這入っていた。
野村は一通り眼を通した後に、大略年代順に並べて見た。
一番最初のものは、今から凡そ三十年以前のもので、重明や儀作の生れる二年ほど前の父の手記だった。
今日、二川重行が事務所に訪ねて来た。鳥渡待たしたといって、ひどく機嫌が悪かった。華族で金持で我まゝ育ちだから、実に始末が悪い。先代の重和という人も、気短かな喧ましい人だった。