Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
こうちょうのなげき
黄鳥の嘆き
甲賀 三郎
Read 黄鳥の嘆き (こうちょうのなげき) by 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 40,792 characters · 82 screens
三
「中々登山をなすったそうじゃありませんか。アルプス方面では開拓者だという事ですが」
「飛んでもない。物好きで、未だ他人のあまり行かない時分に、登った事はありますが、パイオニアだなんて、そんな大したものではありません――鳥渡失礼します」
恰度他の弔問客が来たので、重武はそこで話を切上げて、その方に行った。
野村は屍体の安置してある部屋に行って、線香を上げたり蝋燭をつけたりして、お通夜を勤めることにした。
三
野村は翌朝家に帰ると、ひどく疲れていたので、何を考える暇もなく、グッスリ寝込んで終った。
正午少し以前に眼を覚して、食事をすませて、もう一度二川家へ行こうか、それとも鳥渡事務所の方へ顔出ししようか、いっそ今日は休んで終おうかと迷っている所へ、母が這入って来た。
母はいつにない厳粛な顔をしていた。
「鳥渡話したい事がありますがね」
野村は母の様子が余り真剣なので、思わず坐り直した。
「何ですか、お母さん」
「亡くなったお父さんのおいゝつけなんですが、もし二川家に何か変った事が起るか、それとも重明さんが亡くなった時に、儀作に之を渡すようにといって、書遺して置かれたものですが――」