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こうちょうのなげき
黄鳥の嘆き
甲賀 三郎
Read 黄鳥の嘆き (こうちょうのなげき) by 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 40,792 characters · 82 screens
一体野麦峠ちゅうのは、信州と飛騨との往還になっておりまして、当時は一日に二人や三人の旅人は通ったもンだそうだす。で、そういう旅人は登山家とは違うて、別に人夫を連れたり、特別仕立の服を着たりしまへン。さて、晴れた日に野麦峠を通りますと、そこから乗鞍へは五時間ほどで行けますので、誰でも鳥渡頂上へ行って見たくなる。今いう旅人もそれで、野麦峠からふと乗鞍に登りたくなってやって来た。所が急に雨に会うて、生命から/″\小屋に逃げ込んで来たちゅう訳やったそうだす。
この雨が中々晴れまへン。四五日籠城していますうちに食糧が心配になって来ました。そこで、晴間を見て、馴れた人夫が平湯まで食糧を取りにおりました。その留守の事だすが、茲に逃げ込んで来た旅人が、クレバスの中に落ちて、行方が分らなくなった椿事が持ち上りました。
この時の事を私は何とかして委しゅう調べよ思うて、随分苦心しましたけンど、恰度その当時居合した人夫が、死んだり、他所へ行ったりして、一人もおりまへん。平湯へ食糧を取りにおりた人夫はおりましたけンど、之は現場に居合さんのやよって、はっきりした事はいえまへん。