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こうちょうのなげき
黄鳥の嘆き
甲賀 三郎
Read 黄鳥の嘆き (こうちょうのなげき) by 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 40,792 characters · 82 screens
父の遺書を読んで以来、幾度か驚き、幾度か意外の感に打たれたが、数多い書類を読み進むほど、事件は益々奥深くなり、神秘性を増して、底止する所を知らないのだ。
談話速記には尽く仮名が使ってあるが、それが二川子爵家の出来事である事は、関係者にとっては余りにも明白だ。三十年も以前の事だと思って、不用意に述べられた談話は、どれだけ重明に打撃を与えたか、想像に余りあることだ。犯罪実話の語手の無責任な態度には、野村は少なからぬ義憤を感じた。
が、重武が唾棄すべき詐欺漢であるとは! 無論確証はない。然し、野村には、そうであることが確かに感ぜられるのだ。さて、この談話速記によって、二川重明はどんな事を感じ、どんな事をしようとしたゞろうか。野村は第三と番号のつけてある、重明の遺書を取上げた。
野村君、順序通り読んで呉れたと思う。そうして、君はまさか速記の切抜が、僕の家に関係した事であることを否定しはしまい。実はこの速記を手に入れた時に、直ぐ君に相談しようと思ったけれども、君が頭から二川家に無関係であることを主張しやしないかと思って止めたのだ。僕はむろん速記を読み終るのと同時に、この談話の語手である刑事を探した。