Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
Read 黒田如水 (くろだじょすい) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 163,639 characters · 325 screens
「亥十郎はまったく何か勘ちがいしているのではございませんか」
「何をいう」と、女にはやさしい摂津守もやや色を作して――
「何が亥十郎の勘ちがいか。亥十郎は眼で見とどけていた事だ」
「いいえ、いいえ」彼女も負けていない色を示して来た。そして女のみにある特有な、するどくて粘りのあるいい方で切りこんで来た。
「菊は、わたくしの召使いの者でございます。菊の性はたれよりも知っているつもりです。それにまた、殿のご一族の、伊丹家の縁類ではございませんか。侍女でこそあれ、亥十郎風情が、怪しい女だの、憎いやつだのと、口はばたく申すのは、ずいぶんひとをばかにしたことばでございます。かりそめにも、主筋のものにたいして」
と、たちまち火のつくような迅さでこうきめつけておいてから――
「今夜、菊が天神池へ行ったのは、わたくしのいいつけでございまする。菊の意志ではございませぬ。菊にしてみれば、ほんとに災難だったといってよい。――わたくしが、蛍をたくさんに捕ってこの庭へ放して賜もと、菊にいいつけたからでございますもの――」
「あいや。おことば中でありますが」
こは心外なという血相を示して、亥十郎がふいに遮ると、室殿はひややかに、