Japanische Klassiker mit Furigana
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あるひのれんげつに
ある日の蓮月尼
岡本 かの子
Lesen Sie ある日の蓮月尼 (あるひのれんげつに) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.878 Zeichen · 25 Bildschirme
焦だたしさに、あれから今までたった僅の時間の間に、私の心は経廻り得られるだけのあらゆる境地を探し廻ったということが出来ます。そのあげくにわたくしの心が生甲斐のある途を見出しました。この盗人になることでした。他のものには目もくれません。あなたの肉体を盗み取ろうとする盗人です。
(蓮月しばらく目を伏せて考えて居る。無名の青年は置いた短剣を取り上げて立上ろうとする。蓮月がとめる。)
蓮月 ――まあお待ちなさい。次第によっては盗まれて差上げないものでもありません。が、まだわたくしには腑に落ちないところがあります。それをもうすこし詳しく話して下さい。
(無名の青年止むを得ず再び坐る。)
蓮月 ――あなたはどうしてその半分冷静に半分情熱が残って居る焦立たしい心境から悪の途へ門出されたのです。わたくしの肉体を盗むのがどういうわけでその二つに分れた心境から生れた結果となったのです。
無名の青年 ――(吐息をついて)あなたのように既に人間性の浄化に成功なさった方には、こういう人間性の劣悪な皮肉はもうお分りになりますまい。だが人間がある激烈な心の衝動をうけてその心が四分五裂の苦に苛まれるとき、これを逃れるには自暴自棄の態度が一番宜いのです。