Japanische Klassiker mit Furigana
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いしがおごる
いしが奢る
山本 周五郎
Lesen Sie いしが奢る (いしがおごる) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.304 Zeichen · 45 Bildschirme
「きっとなにかわけがあるんだわ」
「これはただでは済ませません」お春という女が咳ばらいをして云った、「衆人の前でそういう振舞いをするからには」
「ええ、いいわ、いしが奢るわ」
顔を掩った女がそう叫び、袂を放して、女たちのほうへ向き直った。
「今日はいしが奢るから、みんな好きな註文をして頂戴、今日は一世一代よ」
女たちはきゃあと声をあげ、手を叩いた。保馬もわれ知らず苦笑した。はじめて気がついたのだが、それはいつか掬水亭で誤って彼を水へ突落したあの娘であった。
「この望湖庵の養女のいしという者ですが」と手代の弥吉が云った、「本信さま御存じなのでございますか」
うんと保馬が頷くと、娘はこっちへ向いて、顔を赤くしながらおじぎをした。
「なまいきなことを云ってはいけない」保馬が云った、「客がいるのに奢るということがあるか、僭上というものだぞ」
いしは吃驚したような眼で保馬を見て、はいと云って、こくんと少年のように頷いた。
「済みません、取消します、堪忍して下さい」
保馬はてれて赤くなった。そんなつまらないことを云った自分にてれたのである。彼は少なからずあがりぎみで、持っていた盃をいしにさした。