Japanische Klassiker mit Furigana
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いしがおごる
いしが奢る
山本 周五郎
Lesen Sie いしが奢る (いしがおごる) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.304 Zeichen · 45 Bildschirme
七
が死ぬほど好きなんです、けれどもこの胸の、ここのところに」
いしは自分の胸を押えた。
「もう一人さきにはいっていた人がありました、今でもその人は、ここにいるんです、その人はどいてくれないし、いしの胸はこんなに小さくって、こんなに……保馬さま」がまんがきれたようにいしは云った、「どうして貴方はもっと早く来て下さいませんでしたの」
日が傾いて、いっとき庭がしらじらと明るくなった。土地が高いためだろう、風がかなり強く松の枝をふき鳴らしていた。
――いしは眼と頬の涙をぬぐい、銚子を代えるために立っていった。
七
戻って来たいしは銚子を二つ持っていた。その一つを自分の脇に置き、もう一つの銚子で保馬に酌をすると、
「覚えていらっしゃるでしょう」
と云って、袂から扇子を出して彼に渡した。それは骨と紙が剥がれていて、ちょっとまよったが、もちろんすぐにわかった。
「こんな物を取って置いたのか」
「一生持っているつもりでした」
「――返すというのはこれだね」
「持っているとみれんが残りますから」
保馬はじっといしの眼を見た。
「どうして今日返すんだ」
いしは自分の脇に置いた銚子を取り、自分の盃にそれを注いで、保馬を見返しながら答えようとした。