Japanische Klassiker mit Furigana
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いしがおごる
いしが奢る
山本 周五郎
Lesen Sie いしが奢る (いしがおごる) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.304 Zeichen · 45 Bildschirme
まもなく急に酔いだしたようすで、うるんできた眼をきらきらさせ、まともに保馬を見て口を切った。
「あたし今日はほんとのことを云いたいんですけれど、いいでしょうか」
「云わなければならないのか」
「それでないと苦しくって」盃を持ついしの手が震えた、「もう苦しくって、がまんができなくなったんです」
保馬はいしに酌をしてやった。いしはそれを呷るように飲み、こんどは頭を力なく垂れた。
「でもあたし、云えないかしら」
「云わなくってもわかるよ」
「でもあたし云いたいんです」
保馬は黙った。いしは盃を置いた、なかなか言葉が出ないとみえ、荒く息をつきながら、絡み合せた両手の指を揉みしぼった。
「初めはなんでもなかったんです」といしは低い声で云いだした、「ただ掬水亭のことがあるので、遠慮のない気持でいました、それがおめにかかるたびに、だんだん好きになってきて、そうなってはいけないのに、しまいには一日じゅう、貴方のことばかり考えるようになってしまいました」
「そう聞いたって驚きゃしないよ」
「ええ、――」いしは頷いた、「それもわかっていましたわ、保馬さまもいしを好いていて下さる、そう思っても己惚れではないだろうって……だからよけいに苦しかったんです、貴方も好いていて下さるし、いしは貴方を死ぬほども好きなのに、……ええそうです、いしは保馬さま