Japanische Klassiker mit Furigana
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いのちのしょや
いのちの初夜
北条 民雄
Lesen Sie いのちの初夜 (いのちのしょや) von 北条 民雄 (ほうじょうたみお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.366 Zeichen · 63 Bildschirme
何かの錯覚に違いないと、尾田は気を静めたが、再びその声が飛びついて来そうでならなかった。小便までが凍ってしまうようで、なかなか出ず、焦りながら用を足すと急いで廊下へ出た。と隣室から来る盲人にばったり出会い、繃帯を巻いた掌ですうっと貌を撫でられた。あっと叫ぶところをかろうじて呑み込んだが、生きた心地はなかった。
「こんばんは」
親しそうな声で盲人はそう言うと、また空間を探りながら便所の中へ消えて行った。
「今晩は」
と尾田も仕方なく挨拶したのだったが、声が顫えてならなかった。
「これこそまさしく化物屋敷だ」
と胸を沈めながら思った。
佐柄木は、まだ書きものに余念もない風であった。こんな真夜中に何を書いているのであろうと尾田は好奇心を興したが、声をかけるのもためらわれて、そのまま寝台に上った。すると、
「尾田さん」
と佐柄木が呼ぶのであった。
「はあ」
と尾田は返して、再びベッドを下りると佐柄木の方へ歩いて行った。
「眠られませんか」
「ええ、変な夢を見まして」
佐柄木の前には部厚なノォトが一冊置いてあり、それに今まで書いていたのであろう、かなり大きな文字であったが、ぎっしり書き込まれてあった。