Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おさん

おさん

太宰 治

Lesen Sie おさん von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.343 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

一刻も早く、家から出て行きたい様子でしたが、炎天つづきの東京にめずらしくその日、俄雨があり、夫は、リュックを背負い靴をはいて、玄関の式台に腰をおろし、とてもいらいらしているように顔をしかめながら、雨のやむのを待ち、ふいと一言、

「さるすべりは、これは、一年置きに咲くものかしら。」

と呟きました。

玄関の前の百日紅は、ことしは花が咲きませんでした。

「そうなんでしょうね。」

私もぼんやり答えました。

それが、夫と交した最後の夫婦らしい親しい会話でございました。

雨がやんで、夫は逃げるようにそそくさと出かけ、それから三日後に、あの諏訪湖心中の記事が新聞に小さく出ました。

それから、諏訪の宿から出した夫の手紙も私は、受取りました。

「自分がこの女の人と死ぬのは、恋のためではない。自分は、ジャーナリストである。ジャーナリストは、人に革命やら破壊やらをそそのかして置きながら、いつも自分はするりとそこから逃げて汗などを拭いている。実に奇怪な生き物である。現代の悪魔である。自分はその自己嫌悪に堪えかねて、みずから、革命家の十字架にのぼる決心をしたのである。ジャーナリストの醜聞。