Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
徳太郎は女中の案内も待たず、駆け込むように千吉の手をとって、奥の座敷へ連れ込んだ。
「さ、千吉さん」
「へえ」
「早くお見せ」
「何をでござんす」
「おや、何をはあるまい。おせんのふみじゃないか」
「おそうだ。これはすっかり忘れて居りやした」
「お前は道端じゃ見せられないというから、わざわざ駕籠を急がせて、ここまで来たんだよ。さ大事な文を、少しでも速く見せてもらいましょう」
「お見せいたしやす」
「口ばっかりでなく、速くお出しッたら」
「出しやす。――が、ちょいとお待ちなすっておくんなさい。その前に、あっしゃァ若旦那に、ひとつお願い申してえことがござんすので。……」
「何んだえ、あらたまって。――」
「実ァその、おせんの奴から。……」
「なに、おせんから、あたしに頼みとの」
「へえ」
「そんならなぜ、もっと早くいわないのさ」
「申上げたいのは山々でござんすが、ちと厚かましい筋だもんでげすから、ついその、あっしの口からも、申上げにくかったような訳でげして」
「馬鹿な。つまらない遠慮なんか、水臭いじゃないか。そんな遠慮はいらないから、いっとくれ。あたしでかなうことなら、どんな願いでも、きっと聞いてあげようから。