Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
「おこの。――これ、おこの」
鏡のおもてにうつしたおのが姿を見詰めたまま、松江は隣座敷にいるはずの、女房を呼んで見た。が、いずこへ行ったのやら、直ぐに返事は聞かれなかった。
「ふふ、居らんと見えるの。このようによう映る格好を、見せようとおもとるに。――」
松江はそういいながら、きゃしゃな身体をひねって、踊のようなかたちをしながら、再び鏡のおもてに呼びかけた。
「おせんが茶をくむ格好じゃ、早う見に来たがいい」
「もし、太夫」
暖簾の下にうずくまって、髷の刷毛先を、ちょいと指で押えたまま、ぺこりと頭をさげたのは、女房のおこのではなくて、男衆の新七だった。
「新七かいな」
「へえ」
「おこのは何をしてじゃ」
「さァ」
「何としたぞえ」
「お上さんは、もう一時も前にお出かけなすって、お留守でござります」
「留守やと」
「へえ」
「どこへ行った」
「白壁町の、春信さんのお宅へ行くとか仰しゃいまして、――」
「何んじゃと。春信さんのお宅へ行った。そりゃ新七、ほんまかいな」
「ほんまでござります」
「おこのがまた、白壁町さんへ、どのような用事で行ったのじゃ。早う聞かせ」
「御用の筋は存じませぬが、帯をどうとやらすると、いっておいででござりました」