Japanische Klassiker mit Furigana
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かやのおいたち
かやの生立
岡本 かの子
Lesen Sie かやの生立 (かやのおいたち) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.632 Zeichen · 25 Bildschirme
「自分こそだ、てらてら洒落ちゃあ、逢いに行くくせに」
と云うなり、とかとか、と出て行って仕舞った。
白ぼたん、という筆太な、お家流の様な字を細長く囲んだ四角な框を中心に、二つ三つ葉をあしらった牡丹の花を、派手に刷った西洋紙の小さな薄い包みが器用に、婆やの掌の上で開かれると、ぴかぴか、光る銀の延紙のなかの飴色の透きとおる下包の紙の上に、ぼてぼてした粉なお白粉が、多量に盛られてある。婆やはそれを、いつも同じ量程に撮み取って、湯殿の流し場の隅の水桶から小さな盃にとりわけた水を指で掬って溶いて、するするとかやの襟元から塗り始めるのであった。よくお湯を流して、滑に温められた流し場の板敷の上へ行儀よく坐って、後ろ首に白粉をのばす婆やの手の重みに少し前かがみになると、かやの眼の前には向き合って居る婆やの細長く垂れた、二つの乳房がふらふらとゆれて居た。子を生んだことの無いという乳母の乳房の先きは、赤く小さくて、お湯の雫がぽたりぽたりと滴って居る。婆やの手がかやの顔を撫でる頃にはかやはもうなつかしい、快いおしろいの香いに酔わされてうとうととなってしまって居る。
毎夜毎夜の化粧に婆やは、かやの眼元へ薄く紅までさすのであった。