Japanische Klassiker mit Furigana
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かやのおいたち
かやの生立
岡本 かの子
Lesen Sie かやの生立 (かやのおいたち) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.632 Zeichen · 25 Bildschirme
三
幸吉は、三年程前から、長い胃腸病を根治する為に、妻のお邦と、十二になる正太郎という長男と、九歳の裕次と元から家に使って居た二人の小間使を連れて、東京の山の手の或大きな病院の近くに出養生に行って居るのである。今度の留守役は、前の重縁の後見人に何か不始末があったとやらで、厳しい親族会議の末に、幸吉の叔父叔母である、お爺さんとお媼さんとに定められた。お爺さんは東海道で有名な古駅に近い大きな農家の男隠居で確乎した当主の子息もある身の上で、お媼さんはその駅の菓子商を娘の養子に譲って来て居た。お爺さんにもお媼さんにも、もう、とうのむかしに、妻も夫も無かった、お媼さんは、お爺さんの直ぐの実姉なのであった、その上お媼さんの確乎した中にも何処か優しみのある奥床しい性質には、気難しいお爺さんも、一目置いて居たのであった。
三
「かや、また、真白に塗りこねられたな、よせや、役にもたたねえじゃねえか、お常さん」
とお爺さんが例の様に、苦り切って云った。
「へへえ……へえ……」
と婆やは、おどおどするかやをお爺さんの前から自分の後にかくしながら、丁度納屋の戸から出て来たお媼さんの方へ視線を向けて、誰にとも分らぬ様に誤間化し笑いをした。