Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

Lesen Sie ちくしょう谷 (ちくしょうだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.788 Zeichen · 138 Bildschirme

Aozora Bunko

「動いてはいけない」と隼人は云った、「いまゆくからじっとしていろ」

隼人は背負っていた支柱の負い紐を、肩から外した。支柱は背中から落ちてゆき、断崖に当って二度ばかり音を立てたが、下へ落ちた音は聞えなかった。隼人は崖を蹴ってはずみをつけ、西沢の側へ揺れてゆくと、両手でしっかり彼を抱き取った。両手と両足で隼人にしがみついた西沢は、隼人の胸に顔を押し当てて、すすり泣いた。

「どうかしましたか」と崖の上から岡村がどなった、「あがって少し休んだらどうですか」

「杭を一本落してしまった」と隼人が答えた、「まもなくあがるが、杭をもう一本作っておいてくれ」

それから西沢に向って囁いた、「一つ約束をしてもらうことがある」

「私は死ぬべきでした」と嗚咽しながら西沢が云った、「貴方に助けてもらうなんてあさましすぎる、どうして助けてくれなどと云ったのか、自分でもまったくわかりません」

「その話は木戸へ帰ってからにしよう、もし少しでも済まないという気持があったら、温和しく木戸へ帰ると約束してくれ」

「私にはわかりません」西沢は声を忍んですすりあげた、「どうしていいのか、なんにもわからなくなりました」