Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
Lesen Sie ちくしょう谷 (ちくしょうだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.788 Zeichen · 138 Bildschirme
三
きいも同じように隼人を見、隼人は「いいよ」というふうに頷いてみせた。すると、小一郎は急に帯刀の膝から立ちあがり、伯父さんは酒臭いからいやだと云って、隼人の膝へ跨った。
「小一郎さん」ときいが睨んだ。
「叱るな」と帯刀が云った、「たまには男の膝が欲しくなるだろう」そして、抱かれた小一郎と抱いている隼人を眺めながら、涙ぐんだような眼になり、満足そうに頷いた、「うん、よし、これで酒がうまくなった」
三
三月はじめに山の木戸から使いがあって、木戸番頭の生田伝九郎が変死した、ということを告げた。御用林を見廻りに出た途中、雪解の崖道から落ちて即死した。死躰は山で荼毘にしておろすから、遺族を山へ同行したい、ということであった。隼人はこれを聞くとすぐに、早の飛脚を江戸屋敷へやった。
木戸の番頭が死んだので、その後任を選ぶことになり、重職のあいだで人選が始まった。それはちょっとした難題であった。山の木戸詰に仰せつけられるのは、不行跡とか職務上の失策などのあった者で、明らかに「左遷」の意味が含まれていた。そういう該当者のない場合には、重職で人を選むのであるが、木戸詰は島流しも同様のひどい生活であり、ほかにも悪い条件が多いため、選ばれる者よりも、却って選ぶ人たちのほうが当惑するくらいであった。