Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
Lesen Sie ちくしょう谷 (ちくしょうだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.788 Zeichen · 138 Bildschirme
十八
「では今夜また会おう」と隼人が云った、「人の眼につかないように帰ってくれ」
十八
隼人は自分の肌に、西沢の躰温が残っているのを感じた。綱で吊られた隼人の躯に、西沢は両の手足でかじりつき、そうして身をちぢめながら躯全体でふるえていた。
――臆病な、弱い人間なんだな。
その夜木戸の居間で、西沢半四郎と向きあって坐りながら、隼人は心の中でそう思った。西沢のこの臆病なこころと弱さを、兄も知っていたに相違ない。それで兄は西沢を庇おうとし、逆に西沢の奸計にかけられたのだ。しかし、あの断崖の支柱にしがみついて「助けて下さい」と云うあの声を聞いたら、おそらく死んだ兄でも助けの手をさしのべたことだろう。西沢は罪を犯したが、犯した罪を糊塗しようとして、逆に自分の正体を曝露してしまった。今日の彼の失敗は、どんな刑罰にもまさる刑罰だ、と隼人は思った。
「今夜はなにもかも云ってしまいます」西沢は頭を垂れて云いだした、「かけはしのとき貴方は、ここまでくれば底の底だと云われましたが、ここへくるまでの私が、どんな気持で毎日をすごしていたかということを知って頂けたら、私にとってあの言葉がどれほど救いになったかもわかって頂けると思います」