Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
Lesen Sie ちくしょう谷 (ちくしょうだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.788 Zeichen · 138 Bildschirme
「それは済んだことです」
「お願いです、どうか一と言だけ聞いて下さい」
「いや」と隼人は穏やかに遮った、「御用以外の話は断わります」
そしてゆっくりと歩きだした。
木戸と反対のほうへゆくその道は、岩をめぐって段さがりに左へくだり、やがて流人村の上部へと出る。まえの日に、隼人はいちど案内されて来たから、迷うことはないと思ったが、或る曲り角のところで、うしろから「その道は違います」と呼びかけられた。振返ってみると岡村七郎兵衛で、彼は大股に近よって来た。
「闇夜のつぶて、ゆだん大敵」岡村はとぼけた笑顔でこう云った、「外出するときには供を伴れないといけませんね、山は危険です、いつどこからなにが出て来るかわかりませんよ」
「悪七兵衛などといわれたくせに」と隼人が云った、「案外おまえも苦労性なんだな」
隼人の眼はまた、ふた親のない乳児を見るような、温かくやさしい色を湛えた。
「あの綽名を御存じなんですか」
「おまえはおれの教え子だぞ」
「年は三つしか違いませんよ」
「腕だってそう違いはなかったさ」と隼人は云った、「流人村へゆくんだが」
「こっちです」と岡村が手を振った。
藩校の道場で、隼人は岡村に稽古をつけた。