Japanische Klassiker mit Furigana
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どぶろくげんそう
どぶろく幻想
豊島 与志雄
Lesen Sie どぶろく幻想 (どぶろくげんそう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.452 Zeichen · 21 Bildschirme
豚肉や鶏肉や魚類の中華料理、どれもみなうまかった。それから殊に、上等の濁酒があった。粟で造った薄味のものとか、雑菌がはいってる酸味のものとか、あんなのではない。白米で厳密に製造した、真白なこってりした最上品だ。
俺は毎晩のようにここに通ったものだ。ただこの十日間ばかり、心に深い悩みがあり、うらぶれて、馴染みの場所を避け、なるべく見知らぬところを彷徨していた。
俺の姿を見ると、周さんは立ち上って来て、手を執り、はげしく打ち振った。
「待っていましたよ。なぜ来ませんでしたか。どうしていましたか。なぜ来ませんでしたか。」
言葉はせっかちだが、へんに俺の顔色を窺ってるような眼色だった。
俺の方でも、なんだか、周さんの顔色を窺うような気持ちだった。
周さんの相手の男は、もう五十年配の同国人で、俺も何度か顔を合せたことがある。その男へ、俺の知らない言葉で周さんはべらべら饒舌りたて、相手はなんども頷いた。
そこの、腰掛に落着き、卓子に片肱でもたれかかり、甘酢の鶏肉をさかなに、温い真白な濁酒をあおっていると、俺はもう口を利くのも懶くなった。
周さんは、その同国人へは俺の知らない言葉で、俺には俺の知ってる言葉で、こもごも話しかけた。