Japanische Klassiker mit Furigana
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ばちあたり
ばちあたり
山本 周五郎
Lesen Sie ばちあたり von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.391 Zeichen · 44 Bildschirme
「なんて人でしょう」と姉は云った、「おかあさんがまだそこにいるというのに、まるでからかってるようなもんじゃないの」
「うっちゃっておきなさい」と啓三が云った、「敏公には敏公でやりたいようにやりたいんでしょう、放っときなさいよ」
だが姉は聞こうともせずに、敏夫の部屋のほうへ出ていった。啓三は気取った動作で肩をすくめ、私に酌をし、自分も手酌で飲んだ。
「しかし敏公はいったい」
啓三がそう云いかけたとき、姉が駆け戻って来た。
「健さん来てちょうだい」と姉はふるえ声で、奥のほうを指さしながら云った、「敏夫のようすがおかしいのよ、早くいってみて」
私の頭の中で「全巻の終り」という言葉が、鐘を撞き鳴らすように大きく、重おもしく聞えた。まず啓三が立ち、私も立っていった。
敏夫はテープ・レコーダーを枕許に置き、掻巻を掛けてごろ寝をしていた。骨ばかりのように痩せた顔を仰向け、口をあけて、不自然な鼾をかいて眠っていた。半眼にあいている眼の瞳孔は拡大し、口の脇は涎で濡れていた。私は瞳孔と脈をしらべながら、催眠薬だなと思った。
「啓三」私は敏夫の着物の衿をひろげながら云った、「木内という医者を呼んで来てくれ、胃の洗滌をすると云えばわかるだろう、薬はおれの持っているのでまにあうだろう、いそいでいって来てくれ」