Japanische Klassiker mit Furigana
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ばちあたり
ばちあたり
山本 周五郎
Lesen Sie ばちあたり von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.391 Zeichen · 44 Bildschirme
五
「わからない」と云って敏夫が私を見た、涙でぐしゃぐしゃになったその眼は、まるで噛みつきでもするような、異様な光りを帯びていた、「――五番町の兄さんにもわかりませんか」
私は頷ずいた。敏夫は笑った。空罐の中で石をころがすような、空虚な含み笑いであった。
「じゃあ姉さんや啓さんにわかるわけがないや」と敏夫は手の甲で眼のまわりを拭きながら立ちあがった、「ちょっとそこまでいって来ます」
「どうするんだい」と啓三が訊いた。
「めしの注文ですよ」と敏夫は答えた、「ひるめしぐらい喰べてってもらわなくちゃあ済みませんからね」
五
「いっしょにいこう」と私は立ちあがりながら姉に云った、「ちょっと外を歩いて来ます」
敏夫は黙って土間へおりた。私が靴をはいて出ると、敏夫はもう表て通りへ曲るところだった。滑りやすい根雪の上を、私は危なっかしい足どりで彼に追いついていった。――この町は小さく、殆んど帯のように、一と筋の道を挾んで左右に家が並んでいる。うしろはどちらも田畑と草原がひろがり、東のほう遙かに遠く、この県で名高い山塊が、他の低いやまなみを抜いてそびえていた。――いまはさびれているが、昔は郡役所のあったところで、町の中央には繁華街のなごりを残す建物が多く、現在でも映画館や酒場、料理屋などが集まっていた。