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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひととき

ひととき

宮本 百合子

Lesen Sie ひととき von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.370 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

今更恐ろしさに身震をせずには居られなかった。

自分の慰安を得るために、未来はてしなく産れ出づべき子孫の者共の辛痛を思わずに無責任に家庭を作ると云う事が明かな罪悪である事を思わされる。

人間は病苦と淋しさに堪え得る強い心がないのであろうか。

それ等の涙の種を忘れ得る専心の仕事を得られないものであろうか。

斯う思うにつけ、知人の一人でまだ若い人が自分の病苦を未知な子孫に与えるのに忍びないと云って、孤独の一生を送る決心をして居るのを尊まずには居られない。

真に幸福な事には私の体には何の濁った血液も流れ入って居らず健な心臓と頭を持って生活して行けるので私の周囲に起って来るそう云うみじめな事柄を見ききすると実にたまらない様になって来る。

「幽霊」のオスワルド・アルヴィングが受けたと同じ深さの苦悩が彼の人の胸の中にも横わって居るのである。只その苦悩が外に現れたのと、劇しい争を眼に見えぬ心の中でして居るのとの違いがあるばかりである。

或る種の病の様にその生命が危険になった時には既に意識を失って居ると云うのなら幾分苦痛をのがれる事も出来様けれど、最後の一息を吐く瞬間まで明かにすぎる頭のままでなやまなければならない気持を私は心から同情するのである。