Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆずゆ
ゆず湯
岡本 綺堂
Lesen Sie ゆず湯 (ゆずゆ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.255 Zeichen · 27 Bildschirme
」と、私はふと思い出して言った。
「へえ、片月見になるのも忌ですから。」
徳さんは笑いながら薄をみせた。二人は言い合わしたように暗い空をみあげた。後の月は雨に隠されそうな雲の色であった。私はさびしい心持で徳さんと列んであるいた。袷でももう薄ら寒いような心細い秋風が、すすきの白い穂をそよそよと吹いていた。
露地の入口へ来ると、あかりもまだつけない家の奥で、お玉さんの尖った声がひびいた。
「なんでえ、なに言ってやあがるんでえ。畜生! 馬鹿野郎!」
お玉さんが又狂い出したかと思うと、わたしはいよいよ寂しい心持になった。もう珍らしくもないので、薄暗い表には誰も覗いている者もなかった。徳さんは黙って私に会釈して格子をあけてはいった。格子のあく音がきこえると同時に、南向きの窓が内からがらりとあいた。前にもいった通り、窓は南に向いているので、露地を通っている私は丁度その窓から出た女の顔と斜めに向き合った。女の歯の白いのがまず眼について物凄かった。
わたしは毎朝家を出て、夕方でなければ帰って来ない。お玉さんはめったに外へ出たことはない。お玉さんがこのごろ幽霊のように窶れているということは、家の者の話には聞いていたが、わたしは直接にその変わった姿をみる機会がなくて過ぎた。