Japanische Klassiker mit Furigana
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わがまち
わが町
織田 作之助
Lesen Sie わが町 (わがまち) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.840 Zeichen · 186 Bildschirme
もう四十を過ぎた定枝や久枝がめずらしそうに毎日赤ん坊の奪り合いをしている容子が、眼に見えるようであった。
「肝腎の私(うち)に一寸も抱かしてくれはれしめへんねん」
持子の声は明るかった。
「そない言うたかて、あんたは乳のます時はいつでも抱けるさかい……。なあ久ちゃん」
定枝は清潔に澄んだ美しい眼をくるくる動かせて、言った。
「いつもこの通りでんねん。今日かて、あんた、この子の虫封じのお守り貰いに来るのに、一家総出の大騒ぎでんねん」
おたかのその言葉をきいていると、君枝は思いがけぬ持子の不幸が、かえって一家を明るくしているにちがいないと思った。
「ちょっとうちにも抱かしとくなはれ」
赤ん坊を抱かせてもらった。
「――良う肥えたはりまんな」
「へえ、そらもう、郊外で空気はよろしおまっさかい」
おたかは言った。
別れて、病院へ戻ると、夜、君枝は次郎の寝台の傍で産衣を縫うた。七ヵ月さきに生れるとの産婆の言葉だった。
次郎は見て眼が熱くなり、
「ああ、魔がさしてた。潜水夫やめよう思たんは、あれは気の迷いやった。怪我した足が泣いとる。元の身体になったら、はよ潜れ言うて、泣いとる」