Japanische Klassiker mit Furigana
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オンチ
オンチ
夢野 久作
Lesen Sie オンチ von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.673 Zeichen · 42 Bildschirme
「オイ。いけねえいけねえ。あの中に戸塚が居やがる」
「……ウン……居る。あの奴もテニスの連中に眼を付けとるばい。……不思議だ……」
又野が深い、長い溜息を吐いた。
「不思議どころじゃねえ。早く隠れるんだ。俺達二人が揃っているのを戸塚に見られちゃ面白くねえ。……こっちに来たまえ」
三好と又野は慌てて草の中から立上った。二人とも何気なくバットの吸いさしを投棄てて、薄暗い汽鑵場へ引返した。ボイラーから程遠い浴場の煉瓦壁に、三ツ並んで残っている古いパイプの穴から、肩をクッ付け合わせてテニス・コートを覗いた。二人の眼の前にコスモスが眩しくチラチラして邪魔になった。
ネットはもう張られていた。
第一製鋼工場の副主任の中野学士と、職工の戸塚と、事務室の若い人間が三人来て軟球の乱打ちを初めていた。中野学士と戸塚が揃いの金口を啣えていた。
「オイ、三好。中野さんと戸塚の野郎は前から心安いんか」
三好が仄白い光りの中で片目をつぶって笑った。
「戸塚は中野さんの世話で製鉄所へ入ったんだ。自分でそう云ってたじゃねえか」
「そうじゃったかなあ……忘れた……」
「中野さんの処へ戸塚の妹が、女中になって住込んでいる。