Japanische Klassiker mit Furigana
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カストリこうじつろく
カストリ侯実録
久生 十蘭
Lesen Sie カストリ侯実録 (カストリこうじつろく) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.619 Zeichen · 31 Bildschirme
海賊の裔である長身の貴族は、房のような白い眉の下から猛々しい眼付で太子の顔を見据えながら、「やあ、ご機嫌よう。王様には懲りごりなすったでしょう。どんなことがあっても王様になろうなどと考えてはいけません。王様というのはどれほど不幸なものか、これから時間をかけてお教えしましょう。ときに私はあなたを時計屋へ見習いに住みこませようと思って居ります。生計を後援するに足るだけのものを残してあげたかったが、あの馬鹿げた塔からあなたをひきだすのに意外に金がかかって、差しあげられる金といえばこれが全部です」といって机の上へ一ルイドールの金貨を十枚置いた。
太子はカストリ侯爵の養嗣子になり、ロンドンにいる亡命貴族の幾人かを呼んで養子縁組披露のお祝いをしたが、誰一人それが太子だと気づくものはなかった。
太子はベンハム街の時計屋へ見習いに入ったが、一八〇一年に老侯が死んで、天涯孤独の身になった。フランスの貴族の国外逃避は、ルイ十六世がヴァランヌの逃走に失敗した直後にはじまり、その後もひきつづいて行なわれていたが、どの国でもあまり尊敬されず、スペインなどでは王家を見捨てた卑怯者だと、市中で刺殺されたものもあった。