Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.972 Zeichen · 66 Bildschirme
おどろいて、顔の上にかがみ込んで見ると、酒気と濡れた羅紗から発散する鋭い臭いとが交り合って、ツンと鼻を刺す。枕元にウイスキーの瓶がいくつもごろごろ転がっていた。
昨夜、夜ふけちかく、自分が寝ている真下あたりで、机でも倒れたようなえらい音がしたのは、保羅が酔いつぶれて椅子からころげ落ちた音だった。
鎧扉の隙間からくるぼんやりとした朝の光が、たるんだような保羅の横顔のうえにさしかける。頬に絨毯のあとをつけ、寒そうにヒクヒクと身体を顫わせている。額に手をあてて見ると、これも、ひどい熱だった。
キャラコさんは、水瓶を持ってあがったついでに、羽根布団と枕をかかえてきて、そっと保羅の身体にきせかけた。
キャラコさんは、ルビンシュタイン先生のところへピアノの稽古に行っている同級の友達から保羅の噂をきいたことがあった。
保羅は、時々、先生のところへやって来ては、沈鬱な、典雅なようすで、エリック・サティやダリウス・ミヨオやオーリックなどを弾いていた。近代仏蘭西の音楽にたいする理解と感受性にかけては、この日本にあの内気そうな無口な青年に及ぶものはひとりもないのです。