Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.452 Zeichen · 19 Bildschirme
一
市ヶ谷加賀町から砂土原町のほうへおりる左内坂の途中に、木造建ての小さな骨董店がある。
西洋美術骨董、と読ませるつもりなのだろう、はげちょろになった白ペンキ塗りの看板に、"FOREIGN ART OBJECTS" と書いてある。
一間ほどの飾窓のついた、妙に閉め込んだ構えの、苔の生えたような家だった。人が出入りするのを見かけたこともなく、いつ覗いても、店のなかは仄くらくしずまりかえっていて、チラとも人影が動かなかった。
天気のいい日は、家の正面にまともに西陽がさしかけ、反りかえった下見板がほこりっぽく木目を浮きあげる。雨の日は、看板のうしろの窓の鎧扉が、ひっそりとしずくを垂らしていた。
キャラコさんは、土手三番町の独逸語の先生のところへゆくので、一週間に二度ずつこの家の前を通る。
飾窓のなかには、脚のとれた写字机や、石版画の西洋の風景や、セエブル焼きの置時計、壊れた手風琴、金鍍金の枝燭台、さまざまな壺や甕、赤く錆びた三稜剣。……そんなものが、窓掛けの透間から差しこむ光線の縞の中で、うっすらとほこりをかぶって押し並んでいる。
いつか、なにげなくその中を覗いたのが癖になって、行き帰りのたびに、かならずいちどはこの飾窓の前で足をとめる。