Japanische Klassiker mit Furigana
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シベリヤにちかく
シベリヤに近く
里村 欣三
Lesen Sie シベリヤに近く (シベリヤにちかく) von 里村 欣三 (さとむらきんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.803 Zeichen · 12 Bildschirme
二
「いやあ、これは一本まいりましたね」
高村は関羽鬚を揺すって、高笑した。「どうです。一口ウォツカでも…………」
彼は乗馬ズボンの腰を叩いて、隊長の気を引いた。
「うむ。忍ばしているのか。よし行こう」
二
明けても暮れても単調な、だだっぴろい眼を遮切るもののない曠野である。何日間歩きつづけても、それは出発の時と少しも変りのない、雲と密着した青い地平線が意地悪く、その行手に弧線を描いていた。
隊長は退屈で堪まらなかった。聞えるものは終日、油のきれた輜重車の軋みと、ひき馬の鉄蹄と、鞭と、兵卒の怒号と、苦力の怒罵とであった。それが更に濛々と立ち罩め、吹き靡く土煙の汚なさに云いようのない騒々しさと、困難を捲き起し、煽りたてて、しかもそれが出発以来蜒々と続いているのであった。
隊長は堪まらないと思った。憂欝でならなかった。
「一体、何のために、かような奥地にまで踏みこむのだ。」
彼は少しも司令部の作戦が腑に落ちなかった。彼も、また彼の本隊も戦争という戦争には、まだ一度も出喰わしてはいなかった。そして彼は、この出兵にまつわる熾烈な敵がい心を、不思議にも感じられなかった。