Japanische Klassiker mit Furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.321 Zeichen · 54 Bildschirme
外は隈なく冴え渡った月夜である。で、僕は和やかな波の合間に耳を澄して見ると、遥かの彼方からカチン、カチンと頻りに響いている鑿の音が伝って来る。僕は吸い込まれるようにその音の方に耳をそばだてた。
あたりの漁家は既にもう一様に燈火を消して眠りに就いたらしい中で、浜辺近くの松林の傍らにある船大工の工房だけが夜業に励んでいるさまが窺われた。その工房は屋根だけで周囲の囲いがなかったから、その上仕事場の前の広場に焚火があがっているので、働いている人たちの姿がくっきりとシルエットになって浮び出ている。
「もうやっているのか?」
僕は眼を視張って訊ねた。なんとも名状しがたい爽快な嵐が僕の胸のうちには更に新しく火の手を挙げた。
「…………」
七郎丸は深く点頭いてから、重々しい口調で説明した。
「丸源はね、先々代の七郎丸の友達でね――半ば義侠的にこの仕事を完成してやるという意気込みなんだよ。この月のあるうちに大方を仕上げてしまうと、今日力んでいたが、まさしく取りかかったじゃないか。あそこには十五人ばかりの弟子が働いているけれど、八人までは丸源の伜なんだぜ。そろいもそろって屈強な舟大工さ。