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Japanische Klassiker mit Furigana

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ゼーロン

ゼーロン

牧野 信一

Lesen Sie ゼーロン von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.533 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

私は鞍から飛び降りると、今度は満身の力を両腕にこめて、ボルガの舟人に似た身構えで有無なく手綱をえいやと引っ張ったが、意志に添わぬ馬の力に人間の腕力なんて及ぶべくもなかった。単に私の脚が滑って、厭というほど私は額を地面に打ちつけたに過ぎなかった。私は、ぽろぽろと涙を流しながら再び鞍に戻ると、

「あの頃のお前は村の居酒屋で生気を失っている僕を――」と殊更にその通りの思い入れで、ぐったりとして、恰も人間に物言うが如くさめざめと親愛の情を含めて、

「ちゃんとこの背中に乗せて、深夜の道を手綱を執る者もなくとも、僕の住家まで送り届けてくれた親切なゼーロンであったじゃないかね!」と掻きくどきながら、おお、酔いたりけりな、星あかりの道に酔い痴れて、館へ帰る戦人の、まぼろしの憂ひを誰ぞ知る、行けルージャの女子達……私はホメロス調の緩急韻で歌ったが、ゼーロンは飽くまでも腑抜けたように白々しく埒もない有様であった。鈍重な眼蓋を物憂げに伏せたまま、眼ばたきもせず真実馬耳東風に素知らぬ姿を保ち続けるのみだった。そして、翅音をたてて舞っている眼の先の虻を眺めていたが、不図其奴が鼻の先に止まろうとすると、この永遠の木馬は、矢庭に怖ろしい胴震いを挙げて後の二脚をもって激しく地面を蹴り、死物狂いであるかのような恐怖の叫びを挙げた。